ゲーミングPCの電源ユニットについて詳しく解説していきます。
この記事では、ゲーミングPCの電源ユニットに関する以下の内容について知ることができます。
- 電源ユニットの性能と影響
- 電源ユニットの規格と種類
- ゲーミングPCの電源ユニットの選び方
- コスパの優れたおすすめの電源ユニット
BTOパソコンショップのゲーミングPCは電源ユニットが決まっているため、「電源ユニットの性能」のみチェックしましょう。
ゲーミングPCの自作では、電源ユニットの規格や種類までしっかり把握して選ぶ必要があります。
ゲーミングPCの電源ユニット性能について
ゲーミングPCに限らず電源ユニット性能はとても重要です。
電源ユニットの性能が不足すると、ゲーム以前にPCが正常に動作しません。
また、故障の原因にもなります。
電源ユニットの性能が低いと…
- ブルースクリーンの多発
- 強制シャットダウン
- 他のPCパーツの破損、故障の原因
電源ユニットの性能が不足した場合、以上のデメリットが生じます。
電源ユニットは激安なものから高価なものまでピンキリです。
価格のみで選んだ激安電源ユニットを選んでしまうと、PCごと故障するリスクもあるので注意しましょう。
80PLUS認証
80PLUS電源の特徴
- 発熱量が少ない
- パーツへの負荷が少ない
- 省電力
- 静音
電源ユニットの性能は「80PLUS認証」のランクで確認することができます。
80PLUS認証にはランクがあり、上位モデルになるほど電力変換効率が良くなります。
80PLUS認証の電源は全てが「変換効率が80%以上」です。
ランク | 電源効率 |
STANDARD | 80% |
BRONZE | 82%~85% |
SILVER | 85%~88% |
GOLD | 87%~90% |
PLATINUM | 89%~92% |
TITANIUM | 90%~94% |
80PLUS認証の全ランクと電源効率を一覧表にしたものです。
ランクが高くなるほど品質が上がり、電源効率が良くなります。
ただしランクが高いほど価格も高くなります。
80PLUS認証は最も下のランクであるスタンダードでも電源効率80%が保証されているため、80PLUS認証さえ受けていれば優れた電源ユニットと言えます。
ゲーミングPCでは少しでも発熱量を抑え、静音性を重視する必要があります。
ゲーミングPCで使用する場合は最低でもBRONZE以上、できればGOLD以上を選びましょう。
特に80PLUS GOLDはゲーミングPCではよく選ばれるため種類が多く、電源容量のバリエーションも豊富です。
80PLUS GOLDなら変換効率が87%以上あるのでパーツに対する負荷も少なく、5~7年はしっかり活躍してくれるでしょう。
電源効率とは
電源効率とは、家庭用コンセントの交流を直流に変換する効率のことです。
電源効率が高いほど電気代が安く、発熱も少なくなります。
電源ユニットの規格と種類
電源ユニットは規格によってサイズが異なります。
取り付けるパーツ数やケース内サイズによってケーブル接続種類も考えなければいけません。
電源ユニットの規格
電源ユニットの代表的な規格
- ATX
- SFX(Micro ATX)
- EPS
電源ユニットの規格は以下の3種類が一般的で、それぞれサイズが異なります。
電源ユニットはケースに合わせ適切な規格を選択する必要があります。
電源ユニットの規格とケースサイズが不適切な場合、「ネジ留めできない」「ケースに入らない」という致命的な問題が生じるため、必ず購入前にチェックしましょう。
上の3種類以外にも「FlexATX」「TFX」という規格がありますが、自作PCで使われることはほとんどありません。
ここでは3つの電源規格の違いについて解説します。
ATX電源
ATX電源はミニタワー・ミドルタワー・フルタワー等といった一般的なPCケースで採用されている規格です。
ゲーミングPCを自作する場合は殆どの場合ATX電源で問題ありません。
幅広いサイズで使われているため、製品数が非常に多いです。
コストパフォーマンス重視、静音性重視など用途に合わせて選ぶことができます。
SFX(Micro ATX)電源
SFX電源は別名MicroATX電源とも呼ばれている小型の電源ユニットです。
キューブ型や超小型といわれるケースで採用されている電源です。
小型ケースは電源付属の場合が多いため製品数が少ないです。
小中規模のショップでは取り扱いがないため、自作初心者にはおすすめできません。
EPS電源
EPS電源は主にサーバー・ワークステーションに使われる電源ユニットです。
ATX電源の強化版のイメージで、サイズはATXと同サイズのものが多いです。
ただしATXとは一部コネクタの形状が違います。
ワークステーションのような高性能PCに使われる特性から、超高性能なCPUやグラフィックボードを採用したゲーミングPCを自作する場合はEPS電源も選択肢に入ります。
最近ではEPSとATXを両方備えたハイブリッドなモデルも存在します。
ケーブルタイプは3種類
電源ユニットからは多くのパーツに電源を供給するため複数のケーブルが出ています。
電源ユニットのケーブルの接続方式には「直出し式」「セミプラグイン式」「フルプラグイン式」の3つの種類があります。
それぞれ順番に見ていきましょう。
直出し式
出典:thermaltake
全てのケーブルが一か所から直接出ている電源ユニットを直出し式といいます。
出ているケーブルをそれぞれのパーツにそのまま接続する形です。
余ったケーブルはケース内に収納します。
直出し式のメリット
直出し式のメリットはサイズが小さく、価格が安価であることです。
全てのコネクタを使用する場合は直出し式が最もおすすめです。
直出し式のデメリット
全てのケーブルが出ているため、未使用のケーブルによりケース内を圧迫してしまいます。
ケーブル長さが決まっているので、大型ケースではケーブルが届かない場合があり、延長ケーブルが必要となります。
セミプラグイン式
出典:玄人志向
主要なケーブルは直接、ストレージケーブルなどが抜き差し可能なケーブルで接続される電源ユニットをセミプラグイン式といいます。
セミプラグイン式のメリット
セミプラグイン式は必要に応じてケーブルを着脱できるため、直出し式よりも綺麗に配線することができます。
ケース内にスペースが生まれるため、排熱効果の上昇も期待できます。
セミプラグイン式のデメリット
ケーブルのコネクタ部分が硬くて曲がらない、通電しない初期不良リスクが存在します。
コネクタ部は曲がらないため、直出し式にくらべ若干奥行きが長くなります。
フルプラグイン式
出典:玄人志向
全てのケーブルが抜き差し可能な電源ユニットをフルプラグイン式といいます。
フルプラグイン式のメリット
セミプラグイン式と同様に必要に応じてケーブルを着脱できるため、綺麗に配線することができます。
全てのケーブルが着脱可能なため、デザインや長さなどを好きに選ぶことができます。
フルプラグイン式のデメリット
ケーブルのコネクタ部分が硬くて曲がらない、初期不良により通電しないケーブルがある場合もあります。
コネクタの部は曲がらないため、奥行きが長くなってしまいます。
ゲーミングPCの電源ユニットの選び方
ゲーミングPCの電源ユニットの選び方は、BTOショップで購入する場合・自作する場合で異なります。
それぞれ以下の方法で選ぶと良いでしょう。
BTOパソコンショップでゲーミングPCを購入する場合
・電源ユニットは予め決められています。
・電源ユニットが80PLUS認証を受けているかチェックし、予算に余裕があれば80PLUS GOLD以上にカスタマイズして注文する。
ゲーミングPCを自作する場合
・取り付けるパーツの消費電力目安を計算し、1.5~2倍の電源容量を確保する。
・80PLUS GOLD認証以上の電源ユニットを選ぶ。
・使用するPCケース内サイズを確認し、規格を選ぶ。
・取り付けるパーツ数からケーブルタイプを選ぶ。
コンデンサは日本製がおすすめ
電源ユニットに使われるコンデンサは、日本製がおすすめです。
コンデンサが電気を蓄えたり放出することによって電圧を一定にする役割を果たしています。
コンデンサには使用温度の上限があり、85℃・105℃のものがあります。
105℃コンデンサの方が高品質かつ高耐久です。
しかし105℃コンデンサでも品質が低ければ高品質な85℃コンデンサに劣ることもあります。
日本製のコンデンサは品質が高く長寿命です。
そのため電源ユニットでは日本製コンデンサを売りにしているものが多く見られます。
電源を選ぶ際は「日本製コンデンサ使用」と書かれたものを選択しましょう。
ゲーミングPCに必要な電源容量の考え方
ゲーミングPCに必要な電源容量は、システム最大消費電力の150~200%ほどの容量がおすすめです。
電源ユニットは常に最大電力を消費するわけではなく、必要に応じて消費電力を変えています。
そのため「電源容量が不足しないこと」をポイントに容量を選択すれば良いのです。
システム最大消費電力の目安は以下の通りです。
消費電力 | |
CPU | TDP×1.5 |
グラフィックボード | スペックにより異なる |
メモリ | 5W×枚数 |
マザーボード | 50W |
HDD | 25W×搭載数 |
SSD | 15W×搭載数 |
DVD/Blu-rayドライブ | 25W |
上の表を利用して、選ぶパーツに応じたシステム最大消費電力を計算してみましょう。
システム最大消費電力が300Wだった場合、450W~600Wの電源を選べば良いとわかります。
必要消費電力ギリギリの電源ユニットを選ぶと動作が安定せず、強制シャットダウンやパーツ故障の原因にもなるため注意が必要です。
カスタマイズに備え電源容量に余裕をもたせる
デスクトップPCでは後からストレージの増設、グラフィックボードの交換といったカスタマイズが簡単に行えます。
カスタマイズを行う予定がある場合は、予め大きめの電源容量を選んでおくことで、パーツカスタム時に電源ユニットを交換しなくても済みます。
スペック別の電源ユニット容量目安
ゲーミングPCの電源ユニット容量目安を、スペック毎に見ていきましょう。
一番消費電力の大きいパーツはCPUとグラフィックボード。
高品質なグラフィックボードになるほど消費電力は増えるため、BTOメーカーではグラフィックボードを基準に電源ユニットが選ばれています。
CPU | グラフィックボード | 電源容量目安 |
Core i5-10400 | GeForce GTX 1660 SUPER | 550W |
Ryzen 5 3500 | 550W | |
Core i7 10700 | GeForce RTX 2070 SUPER | 650W |
Ryzen 7 3700X | 650W | |
Core i9 10900K | GeForce RTX 2080 SUPER | 750W |
Ryzen 9 3900X | GeForce RTX 2080 Ti | 750W |
CPUとグラフィックボードの組み合わせを抜粋し、電源容量の目安を表にしました。
ゲーミングPCを自作する方は上の表を目安に電源ユニットを選択すればOKです。
ただしSLI接続によるグラフィックボード2枚差しをする場合は消費電力が大幅に増えます。
グラフィックボードを2枚にする場合は1000W以上の電源ユニットを選びましょう。
ゲーミングPCにおすすめな電源ユニット3選
ゲーミングPCのおすすめ電源ユニットを紹介します。
コストパフォーマンスに優れた「80PLUS GOLD」の電源ユニットからおすすめの3台を紹介します。
オウルテック(Seasonic製) FOCUS-GX
80PLUS GOLD フルプラグイン式
ハイブリッドファンコントロール、日本製105℃コンデンサーと2万円前後のPC電源の中では非常に品質が高いのが特徴です。
ハイブリットファンコントロールにより、温度と負荷を検知して自動的にファンの動作を切り替えるため無駄がなく、高い静音性を実現しています。
フルプラグインケーブルなので不要な配線を外してケース内を綺麗に配線することができます。
10年の新品交換保証があるため、PCを買い替えるまで長く使いことができるのも魅力です。
Antec(Seasonic製) NeoECO GOLD
80PLUS GOLD セミプラグイン式
1万円前後のミドルレンジの電源ユニットの中でも品質が高く、コストパフォーマンスに非常に優れている電源ユニットです。
ErP Lot6 2013サポートにより、スタンバイモード時は待機電力0.5W以下に自動調節してくれます。
120mmスリープベアリングファンにより、高い静音性を実現しています。
7年の新品交換保証があるため、PCを買い替えるまで長く使いことができるのも魅力です。
玄人志向 STANDARD
80PLUS GOLD フルプラグイン式
高品質低価格を実現した電源ユニットで、コスパにとても優れています。
低価格なためファンコントロール機能や自動電源制御などの機能はありません。
また保証期間も3年と短めになっています。
日本製コンデンサ、最小負荷電流0A設計、12cm静音ファンなど最低限必要な機能のみを搭載した電源ユニットなので、とにかくコスパを重視したい方におすすめです。
ゲーミングPCの電源まとめ
ゲーミングPCの電源ユニットについて詳しく解説しました。
ゲーミングPCの電源は「80PLUS GOLD」以上のランクのものがおすすめです。
電源容量は搭載しているパーツに応じて正しく選びましょう。
電源ユニットの品質はPCの寿命や故障の原因に直結しますから、品質の高い電源ユニットを選ぶことが大切です。
激安電源ユニットを自作PCに使用した方の体験談
自作PCを始めたてで電源ユニットの重要性に気づかず、激安電源ユニットを使用したことがあります。
そのPCは自作後半年も立たないうちに電源ユニットが煙を上げて破損し、マザーボードまで交換が必要なダメージを負ってしまいました。
幸い中古パーツの流用や格安パーツで組み上げたので損害はそこまで出ませんでしたが、それ以降は激安電源ユニットは使っていません。